高齢者(こうれいしゃ)とは、成人で一定の年齢以上で職業生活から引退し、社会の第一線から退いた人のことである。高齢者になると、身体の不調が増加し、徐々に死を意識し始めるといわれている。子孫を残すという生物としての使命を終え、肉体が衰え死に至るまでの移行期間にあるヒトのことを意味する。由緒正しい日本語として「老人」の語が適切であるが[要出典]、近年は特に行政用語としては「老人」の語を避けて「高齢者」と呼ぶことがある。
含まれる範囲
高齢の線引きは曖昧且つ主観的な部分があり、判断は容易ではない。定年退職者もしくは老齢年金給付対象以上の人を言うことも考えられる。国連の世界保健機関(WHO) の定義では、65歳以上の人のことを高齢者としている。65 – 74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者、85歳以上を末期高齢者という。因みに、人口の年齢構造では、0 – 14歳までを年少人口、15 – 64歳までを生産年齢人口、65歳以上を高齢人口という。
高年齢者雇用安定法における定義
高年齢者
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(略称:高年齢者雇用安定法)における「高年齢者」とは、55歳以上の者を言う。
高年齢者等
高年齢者雇用安定法における「高年齢者等」とは、「高年齢者」、および55歳未満の「中高年齢者」(45歳以上の者)である求職者、および55歳未満の「中高年齢失業者等」(45歳以上65歳未満の失業者その他就職が特に困難な失業者、具体的には身体障害者、刑法等の規定により保護観察に付された者等で、その者の職業のあっせんに関し保護観察所長から公共職業安定所長に連絡があった者)を言う。
社会との関わり
一般的に、高齢者の多くは経験を積み、様々な事に熟達しているとされる。加齢に伴う運動機能の衰えや、老衰に伴う記憶力の減退等といった理由により、第一線を退いたとはいえ、その豊富な経験と、その経験によって導き出される勘は、学習によって得られる知識や、練習によって習得する技能を超えた効率を発揮する。これらは若者にとっては学ぶべき所は多く、また後代に伝えるべき物とされる。
高齢者は古くより、社会的にも様々な経験や知識によって一定の地位を獲得しているが、特に古代から近代初期に掛けては、医療技術が発展していなかった事もあり、高齢になるほど希少な存在となったため、長らくは「古老」や「長老」と呼ばれる、高齢者に対する特別な尊称が存在する。儒教に基づく敬老の考えも、高齢者が尊敬されることに一役買っている。
前近代における社会では、高齢者は豊富な知識と経験で民間療法にも通じ、呪術医などと同列の存在となっていた。このため、高齢者に対する一定の畏敬の念が存在し、高齢者に関連する物品までもが何等かの霊的な効能を持つと考えられていた。実際には高齢者の持つ薬草などの知識や、経験から来る適切な看護措置に負う所が大きいが、これらは後に高齢者が人の生命(健康)をも左右するという考えに発展、さらには魔法使い等のイメージの原型となったとされる。
日本での事例
一人暮らし
社会の高齢化、核家族化が急速に進んだことにより、高齢者の一人暮らしが増加した。1955年に42万5,000世帯 だった高齢単身世帯は、1965年に79万9,000世帯、2005年には386万世帯となっている。
高齢の運転者による交通死亡事故
2005年の上半期(1 – 6月)の全国の交通事故による死者のうち、高齢の運転者による死亡事故は増加している。警察庁は「安全教育に加え、高齢者の個々の運転能力に応じた対策も検討を重ねる必要がある」としている。死者の年齢別では、65歳以上の高齢者が全体の41.5%を占めている。漫然とした運転や不適切な運転操作が原因のケースが約3割を占めた。
この状況を受け、警察庁は75歳以上の高齢者の運転免許更新時に認知機能検査を盛り込んだ道路交通法の改正を2007年の通常国会に提出し、2009年6月から施行されることとなった。
杖と権力
現代においても権力の象徴として杖(笏・司教杖など)が利用されるが、これは高齢者が獲得した威厳の代用品である。また、西欧においてはこれが司祭等の宗教的権力の象徴となり、これを国王が持つ事で宗教的な権力をも王が持つ事を表した。
武術と老人
伝統武術の分野では、後世に様々な技術(戦闘技能だけでなく、医療なども含む)を伝えるべく、指導的立場に立つ高齢者は多い。「老師」などと呼ばれる存在である。ただし、中国武術では「皆伝者」と同等の意味合いを持つ言葉でもあるため、老師は必ず老人であるとは限らない。伝統武術では基本的には正しい姿勢が重要視され、ほとんどの武術では「形」によってこの姿勢及び体捌き、発力法などを学ぶ。
このため高齢者である武術の達人は、身体的な衰えがあったとしても、基本の出来ていない若者と比較して、圧倒的な強さを発揮する。しかし、基本の修練により練磨された身体能力は、簡単には衰えない筋力を使用している事が多い為、必ずしも筋力で劣っている訳ではない。
さすがに素手で岩山を叩き割ったと言うのは多分に誇張が含まれるが、長年の経験によって、弱点を正確に捉えたり打撃する・相手の動作を予測してかわすといった動作により、これら達人に挑んだ者は、あたかも異常な能力によって打ち倒されたと錯覚するケースも発生する程である。実際に猛者を吹っ飛ばしてしまう者も存在するため、練磨された技能と錬成された筋力の両方の力によって、本当に「異常な能力」を持つ者は多い。
科学と老人
近代において多量の知識を必要とした科学者においては、老人は既に学会の淘汰を生き残り、必要な助言を与える者として尊敬され、かつ、学者を代表するイコンとして老人は厚遇されてきた。しかし近年、身体・精神を飛躍的に改良する薬物や、遺伝子工学が社会主義圏及びアメリカで多用され、若い科学者がすぐに過去知を記憶できたり、老人が若い科学者の論文を理解できなくなった結果、老人はその一族の学会内部の権益を代表して学会内部政治活動は行っていても、直接的に学問に干渉することはなくなった。その事により老化した、かつての有名人を学会内部でからかいの対象とすることもよくあるようになった。しかし、蓄積知が有効な社会科学では、エキスパートシステムの構築時やデータベース構築時に助言を求められることもある。
高齢化
ある国・地域において、高齢者が人口の7%以上を超えると高齢化社会、14%を超えると高齢社会と呼ばれる。日本では、1935年では4.7%で最低であったが、1994年では15.9%となり、高齢社会となった。今後も高齢化率が進み、介護ニーズも高まってくることが予想され、今後高齢者が日本社会にとって負担となるとする意見もある。
呼び方
時間とお金に余裕があり、また、認知症・寝たきりなどに掛かる高齢者に対する恨み・妬み・嫌悪から、高齢者に対する蔑視や高齢者虐待 (Ageism) が増えてきた。これを受けて、「年をとった、年寄り、高齢の」といった年齢を強調した表現を避け、「より経験豊かな、先任の」といった価値中立な表現を工夫して用いるような傾向が出てきている。たとえばoldではなく、senior (シニア)、eldery、agedなど。
日本語においては、同義語として老人、年寄(お年寄り)などの言葉がある。また、この世代を老年と称する場合がある。日本の公共交通機関には高齢者・病人・怪我人・妊婦などのための優先席が設けられているが、東京都交通局など一部の事業者はこれを「シルバーシート」と表現していた。ここから、日本においては高齢者のことをシルバーとも呼ぶようになった。また、高齢者が自身を「シルバー」と表現することも多く見受けられる。高齢者の職業技能を生かすための、「シルバー人材センター」という名称の施設が各地に存在している。
フィクション
魔法
今日、ファンタジー等において魔法使いが杖(ワンド、ステッキ)等を振りかざす事で魔法を行使する描写があるが、これらは高齢者の象徴である(歩行補助器具としての)杖が、霊的な効果の発露を行っているという思想の発展形であると考える民俗学者もある。またこの他にも、高齢な魔法使いほど強大な魔力を持つという思想も、民間療法に通じた高齢者の存在を形容した物だと考えられる。
武術など
架空の世界を扱った作品(漫画・アニメといった物から映画・小説に至るまで)等でも戦闘に長けた老人は多数登場する。中でも武術を習得し、格闘戦等が得意で戦術の知識を長年培ってきた老人キャラクター(『ドラゴンボール』の亀仙人など)も多々見られ、またメジャーとは言えないが、老騎士もかなり戦闘力が高い形で描かれている。
しかし、漫画や小説のメディアでは読み手が感情移入しづらいので、高齢者がこれら作品中で主役になることは殆ど無く、そのポジションは脇役になることが多い。例えば、主人公の未熟な時代の師匠という役割である。これは、これら作品の受け手が血気盛んな若年・青年層に集中するためと思われるが、実社会でも若年・青年層が高齢者に学ぶ物は多いと言えよう。しかし、作品の途中で敵と戦った末に戦死したり、次の世代に意思を託して衰弱死するなど、物語の中間地点で死んだりすることも少なくはない。
少年漫画で老人が主人公を張った数少ない例として、小畑健の『CYBORGじいちゃんG』(『週刊少年ジャンプ』連載)がある。
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